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彼女はかつて、己の統べる何者かを、《日出づる国》と称した。 彼らは彼女を評して、《黄金の国》と呼んだ。 名を馳せた彼女は、しかしある時姿を消した。 隔絶された世界の果てで、その美しい身を隠し、ただひっそりとまどろみつづけた。 まるで、ラプレンツェルのように。 彼女が閉ざされた塔へと彼らを招き入れた時、世界は息を吹き返す。 彼らの手を借り聡明となった彼女に、しかし彼らは《自立》というものを許さなかった。 彼女は希望だった。 彼女の周りには、幼く、力無い兄弟たちが。 支配していたのは彼ら。 彼女の旗本に噛み付かれることを恐れたのだ。 絞められる首。 涙も涸れ果てた後、残ったのは諦めと怒りだけだった。 反旗は翻る。 朗々と轟く咆哮の中、大国を、強国を。 我が牙にて、喰らわんと。 彼らを父とした、精強なる彼女の子らよ。 「国を愛せ」と彼女は言った。 「民を護れ」と彼女は言った。 「ただの一兵となろうとて、民さえ残れば、国は遺る」 愛しき子らは銃を取り、哀しき子らは血を浴びて、嗚呼その様はいみじくも、さながらエディプスの反乱で。 進め、我らが正義の旗よ。 民のために、母のために。 トップへ |