榛名日記・弐【ヘンダーソン飛行場と艦隊砲撃編】
               



久しぶり!
8月になったよ。
7日に、ガダルカナル島に米軍が上陸し始めました。
兄ちゃんたちと合流。
GF司令部は、翔鶴瑞鶴を突っ込むみたい。

ここからは、聞いた話。
比叡兄ちゃんいわく、24日に会敵したらしい。
(第1次ソロモン海戦)
その時、たまたま別任務で別動してた龍驤ちゃんに敵が殺到!
可哀相に、空母1欠。
ただ、龍驤ちゃんが代わりに航空機を引き受けてくれたおかげで、比叡ちゃんの索敵機は、敵主力を発見!
翔鶴ちゃんの爆撃機が大破させることができたんだって。

さて、僕のこと。
僕は、兄ちゃんと一緒に三戦隊を組んでトラックに行きました。
9月の6日だったかな?

10月11日、兄ちゃんとソロモンに行くことになった。
僕らは、挺身隊って呼ばれる。
身を挺して事態を救う、ってそういう意味。
いわく、帰ってこれないかも、ってこと
(この頃はまだ特別攻撃隊なる言葉はなかった)
作戦内容は、こう。

奪われたガダルカナルを奪還するために行動中の陸軍を援護するため、邪魔くさいヘンダーソン飛行場―日本軍が建設直後に奪われたもの!酷いよね!―を洋上爆撃!
ボロボロにして使い物にならなくしてしまおう、そしたら、今は航空機に逃げ隠れをしなきゃならない陸軍が陸上から奪取、失地回復……っていう。
勿論向こうは艦隊配置してるだろうし、危険だって誰もが分かってる。
……それでも行くのが、日本人だしね。

(もとよりガダルカナルで抵抗していた海軍陸戦隊は、X日にエスペランス岬、タサハロング岬、クルツ岬で焚火をたくように命をうける。これを使用した3点方位法を用いて漆黒の飛行場を見付だし、確実に破壊しようという魂胆である)

X日は、13日2335になる。
僕、兄ちゃん、五十鈴と、駆逐艦たち9隻の編成。

12日朝、昨日2330に、6戦隊と駆逐艦たちが、サボ島あたりで会敵!
巡洋艦1(4)轟沈、1大破だって!
ただ、僚軍も、青葉ちゃんが大破、古鷹ちゃんに至っては沈没したらしい。
代償は大きかったって訳……。
青葉にいた司令艦長も戦死だそうだ。

13日、今日があのX日。
0900敵飛行艇発見。
遠すぎるので、辛くも逃す。
バレたからには、敵も黙っちゃいないだろ。
味方機が、ガダルカナルSE200マイル、空母を発見。
2隻……2隻!?
あ、東に行くらしい。
よかった、向こうだ。
28ノット、ダッシュでガダルカナルを目指す。
引き返してこないといいけど。
1200、北東200マイル。
ガダルカナルまでもうちょっと!
でも、ガダルカナルの東170マイルに戦艦1隻、重巡1隻、駆逐艦2隻。
西にいくらしい。
西!
やっぱ気付かれてたー!(泣)
大至急ルンガ泊地を目指す。
今の所、ルンガは手薄!
はよう行って押さえとかんと!
11日に戦力は削いでて貰ってる。
青葉と古鷹の犠牲を無駄にできんしょ!
2045、敵駆逐艦も逃走したらしい。
宵は新月、素晴らしき暗夜。
よしゃ!機は熟せり!
暗闇の中、三つの灯火発見。
距離を慎重に計って、飛行場を照準。
2335、撃ち方はじめ!
主砲が唸る!
闇夜に花火が咲く咲く!
周りでは、残ってた水雷艇が食い下がってくるもんだから、機関銃も砲火を開く。
飛行場は炸裂する弾丸で赤く浮かび上がるし、吹き飛ぶ飛行機も目に映る。
主砲の反動で指揮所の人たちはクラクラしてるけど、そこは軍人。
直ぐさま立ち直って砲撃を続けてく。
老兵と呼ばれる僕らでも、中身は新型、機関科の頑張りで速力は18ノットで安定してるし、最高だよね!
0030わわわ、魚雷!面舵回頭!
0033、一斉回頭。
射撃を再開する。
0056、撃ち方やめ。
皆汗みずくの中、息をつく。
帰頭開始。
兄ちゃんが472発、僕が504発撃ったと判明。
わーい、兄ちゃんに勝ったぞぉ♪
大成功だよね、大成功だよねっ!
後は、待機してる陸軍たちが、総攻撃で占領してくれたら、大勝利だよっ!

(しかしながら、補給不足と断じた陸軍は延期、永遠にヘンダーソン飛行場は日本の手に戻らなかったのである)

10月6日、翔鶴、瑞鳳、筑摩が壊れる海戦が発生。
敵空母撃沈、大破、戦艦重巡大破、駆逐艦を撃沈したらしい。
比叡ちゃんと霧島は、こっちに参加。
大和さんの艦橋では、僕たちのことを元に、「艦砲において陸上攻撃は有効である」「が、しかし2回目は危な過ぎる」という論争沸騰中。
兄ちゃんいわく、「今回は奇襲だったから成功したんだ」とのこと。
ふぅん、じゃあ、奪い返せなかったヘンダーソンは、どうするの?

11月9日朝、戦況の逼迫に伴い、渋々第2弾が決定。
今回は、比叡ちゃんと霧島が行くことに。
僕は兄ちゃんと一緒に帽振れをしながら、兄ちゃんが厳しい顔で「今回は難しかろうな」と呟くのを聞く。
急に不安になって大きく手を振ったら、比叡ちゃんがいつもみたいに柔らかく笑って振かえしてくれた。
霧島は、呆れ顔で、でもちょっと笑ってる。
きっと大丈夫。
僕、話したいことがいっぱいあるんだ。
早く帰ってきてくれるといいな。

――これが、僕の見た最後でした。
挺身隊は敵の待ち伏せを受け、比叡ちゃんが機関故障を何とかしようとした末、総員離艦、壮絶な戦死を遂げ、退避していた霧島も戦線に戻ったところを攻撃、沈没したらしい。
後述――



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