榛名日記・参【マリアナ・レイテ沖海戦編】
               



19年6月兄ちゃんとマリアナ沖海戦に。
大鳳、翔鶴、飛鷹が犠牲になる。
この海戦のことは、あまり書きたくない。
機銃と高角砲が頑張ってた、ってことは書いておこう。

22日、ボルネオに行く道すがら、目指すはブルネイ泊地。
敵空襲をうける。
爆弾2発を喰らう。
くそーっ!!
何が酷いって、後甲板突き破るんだよ!?
余りの被害に、兄ちゃんと離れて、佐世保に帰頭することに。
久しぶりのホーム……って、笑えねーよ!!(涙)
一人だけ……!
一人だけ落伍って……!!
苦々しい思いで舵を切ると、大和様は笑って「ゆっくり休んで、早く戦線に復帰してください」と呟いた。
「貴方がいないのは、多大な損失だ」
長門様は、いつも通り気難しい顔をして、でも敬礼をよこしたし、兄ちゃんも手を振っていた。
ただ前をみて、強い後ろ姿だけだったけど。
早く戦線に戻ろう。
不覚にも滲んだ涙を拭いて、まだまだ見えない本土を見据えた。
比叡ちゃんと霧島のぶんも、戦って、戦って、日本に勝利を。
そのためにも、早く全力を取り戻して兄ちゃんの隣に、

(僕の世界は、いつだってこうだ。幸か不幸か、皆僕の知らないところで散ってゆく。さて、それは幸せなこと?)

――このあと海戦の帰路で、彼は残る唯一の兄《金剛》も、敵潜水艦の雷撃をもって失っている。
そんな彼も、敗戦を前に大破着底。
敗戦後、解体処分となった。
彼が戦線に復帰した後も、戦況は決して回復せず、ただ生ける海上砲台として生き、敗戦を見届ける、伝聞者としてしか存在しえなかったことは、まことに残念であり、遺憾なことである。
以上、ある海軍中尉の記注による――



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